
「2-0は危険なスコア」
サッカーの世界では、よく言われる言葉だ。
実際には2-0から勝つ確率は9割を超えるというデータもある。ただし、そこから1点を返されて2-1になると、1-0でリードしている場合よりも同点に追いつかれる割合が高くなるという(Jリーグ公式/データスタジアム調べ)。
2点差だったはずなのに、1点を返された途端に試合の空気が変わる。
9月12日、開幕から2連敗同士で迎えた、ヴィアティン三重とFCティアモ枚方の一戦のことだ。
今年、芝を張り替えたというBASICスタジアム東員の鮮やかな緑のピッチで、その言葉を思い出すような90分が待っていた。
開始11分で、2-0
ティアモとして最高の滑り出しだった。
開始早々、石井稜真が相手最終ラインの背後へ抜け出してネットを揺らす。これはオフサイドとなったが、その直後だった。
4分、最終ラインの川﨑章弘が前線へ送ったボールに、再び背番号39・石井が抜け出す。
今度はオフサイドではない。
相手GKとの距離を詰めながら、左足でゴール右へ。
1-0。ティアモが先制する。
さらに11分、今度は1人の突破ではなく、きれいなパスワークからだった。
若谷拓海が縦へボールを入れる。
受けた石井がダイレクトで落とす。
そこへ入ってきたのが、二列目の原直生。
右足を振り抜くと、ボールはゴール右上へ吸い込まれた。
2-0。開始わずか11分で、2点のリード。
原は試合後、このゴールをこう振り返った。
「練習からコンビネーションを意識するのは、チーム全員でやっていたことなので、それがいい形で出たかなと思います」
開幕から2試合、まだ勝利がなかったティアモ。三重での90分は、これ以上ない形で始まった。
しかし――。
ここから、「2-0は危険なスコア」という言葉が現実味を帯びてくる。
2-0から、2-2へ
20分、ヴィアティン三重が中央からティアモの守備を崩し、冨士田康人がゴール。
2-1。1点差になると、徐々に三重がボールを持つ時間が増えていった。
それでもティアモも攻撃の糸口を探す。
川﨑がボールを持てば、久保田和音が背後へ動き出す。石井は前線でボールを収める。
37分には菅野隆星からのロングボールを右サイドの若谷が見事にコントロール。そこから中へ切り込み、シュートまで持ち込んだ。
前半終盤は三重に押し込まれながらも、2-1のままハーフタイムへ。
そして後半開始早々の49分。三重がフリーキックからトリックプレーを仕掛けた。1人スルーすると、最後は中央から饗庭瑞生にミドルシュートを決められた。
2-2。開始11分でつくった2点のリードが、なくなった。
そこからは、三重に押し込まれる時間が続いた。52分にはミドルシュートをGK中川真がセーブ。
右から。左から。三重がティアモのゴールへ迫る。
ティアモはなかなかボールを保持できず、自分たちのリズムをつくれない。
開幕から2連敗。
そして、この試合では2点のリードを追いつかれた。
球際の詰め方一つ。寄せの一歩。前へ出るのか、下がるのか。
1つひとつのプレーに、難しい判断を迫られる時間が続いた。
それでも、この日はここからまた始まった。

83分。また、川﨑から石井へ
83分、ティアモの最終ラインでボールを持ったのは、川﨑だった。左足から放たれたフィードは、相手最終ラインの背後へ。
走り出していたのは、石井。ボールを収め、そのままGKと1対1になる。右足一閃、ゴールネットを揺らした。
3-2。
押し込まれ続けていたティアモが、再び前に出た。
このゴールには伏線があった。
石井は試合後、2つのゴールについてこう話している。
「2本ともあきくんからのボール。後ろからのロングボールだったんですけど、練習のときから話していた形。あきくんからああいうボールがあるというのは、自分の中でも分かっていました」
「あきくん」とは、センターバック川﨑章弘のことだ。
1点目も、3点目も、川﨑から石井へ。
練習から話していた形が、勝点3につながった。
しかも石井は、
「この前の試合でもそういう形は作れてた」
とも話している。
前節、ホームで1-3と敗れた岡崎戦。
結果にはならなかったものが、三重ではゴールにつながった。
そして、勝利になった。
それでも、勝った
試合はその後も簡単ではなかった。
三重は最後までプレッシャーをかけ続け、両サイドからティアモのゴールへ迫った。
それでも、最後の一線を越えさせない。
そして試合終了。
3-2。
ティアモが、2026-2027シーズン3試合目で初めて勝点3をつかんだ。公式記録では三重が14本、ティアモが12本のシュートを放った。
きれいな勝ち方ではなかった。
2点を先行しても追いつかれ、後半は押し込まれる時間が長かった。
それでも、勝った。
前節の岡崎戦後、清川流石は次の試合について、「内容どうこうというよりは、とにかく何が何でも勝ち点3を取る」と決意を込めていた。
三重でティアモが手にしたのは、まさにその勝点3だった。
「どうやって、勝つのか」。
その答えは、完璧な90分ではなかった。
苦しくなっても、追いつかれても、最後にもう一度、ゴールを奪う。そして、勝ち切る。
そんな勝ち方もあるだろう。
「チームとして全員が戦えて、チーム一丸となって勝てる試合でした」(原)
開幕から続いた連敗は、2で止まった。
次は9月21日(月・祝)、アウェーで沖縄SVと対戦する。
初勝利を挙げた石井に、次の試合について聞いた。返ってきた言葉は、驚くほど短かった。
「連勝しないと意味ないんで。勝ちます」(石井)
初勝利の余韻に浸るつもりは、どうやらないらしい。
三重でようやく手にした、最初の勝点3。
次に見る楽しみは、もう決まっている。
この1勝を、次の1勝につなげられるか。
さあ、どんな勝ち方を見せてくれるのだろう。
MATCH INFO 2026年9月12日(土)18:00 KICKOFF 第28回日本フットボールリーグ(JFL)第3節 ヴィアティン三重 2-3 FCティアモ枚方 得点:4分 石井稜真/11分 原直生/83分 石井稜真 会場:BASICスタジアム東員 観客数:1,177人

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